大長谷小学校

大長谷小学校(昭和37年築、平成24年解体)

新潟県胎内市大長谷51-1

 キャタピラの跡の刻まれた県道に沿って、しゃれた円形校舎があった。新潟県北蒲原郡黒川村大長谷小学校。五年まえに、ここの村長さんが、「ひとつ、村いちばんの辺地に、モダンな校舎を建てよう」といいだし、建てられたのだそうだが、いまここの一八六人の生徒の授業が、ときどき、山あいにこだまするブルドーザーのうなり声にかきけされる。

 小学校のおとなりが保育園で、コスモスのかげであそんでいた園児に、ふと昨(一九六七)年の水害の話をきいたら、みるみるその顔から笑いがきえて、「おらあ、知らね」と、はげしく首をふるのだった。

 死者一六〇人、行方不明二八人、被害総額一、〇三九億円という非情な数字をだした昨年八月二八日の羽越水害、なかでも被害のいちばんはげしかった新潟県最北部の村むらを歩くと、その山ひだの一つ一つに、被害民の嘆きと怒りと悲しみがかくされているような気がした。

永井萠二著『春風のなかの子ども―ルポルタージュ 浮浪児からテレビッ子まで』太平出版社(1979年)

胎内市立大長谷小学校-学舎の記憶|廃校を旅するブログ