『毎日新聞』(1954年6月15日朝刊都内中央版8面)
近代的な円形校舎
練馬の富士見高に年末お目見得
土地も食わず、工費は安くしかも採光もよく建物はスッキリという一石三鳥をねらった珍しい円形四階建の校舎が練馬に今年末までに完成する。この円形校舎は既に金沢市に同一設計者の手で完成、話題をまいたが東京では初めてで建築界でも注目されている。練馬区私立富士見高等学校が工費三千万円で建設を計画中の新校舎がそれ。この七月に着工、本年末にはS建設の手で完成することになっている。
設計は文部省学校建築委員工大教授の坂本鹿名夫氏(四二)が当った。同校舎は直径二十五メートル(百四十九坪)で中央は四階までをつなぐ幅三メートルの階段で、三階までは各階とも六方向に仕切られこのうち隣り校舎をつなぐ真北の部分を除いて各階五、計十五教室がとれる。各階の外周には幅一メートルのベランダがあり各教室と真北の階段に連絡しているので火災の場合は中央階段と真北の階段の二ヵ所から避難できる。各教室は黒板を頂点に左右に広がった扇型で建物の外壁に当る部分が総ガラスばりなので採光はすばらしいという。四階は中央ホールの頂点になり、直径十一メートルの百五十人収容の集会場となっている。従来の長方形校舎に優る特長は
(1)敷地の高低、傾斜、地盤の軟かいことなどが問題でなくなる(2)円形のためあらゆる方面からの外圧、風圧に耐える(3)工費では鉄筋量は四分の一、コンクリート量は二分の一ですむ。
などである。
坂本教授談 この建物の第一のねらいは、限られた敷地を最大限に利用するという点から出発している。この円形だと廊下が極端に少くてすむ。このほか工事上の配線、暖房その他の付属施工も簡単ですむ。
写真
年末には完成する円形校舎
『毎日新聞』(1954年6月15日朝刊都内中央版8面)
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