『アサヒグラフ』(1954年11月10日号p8~p9)

円筒型の学校

 世界でも珍らしい円筒校舎が金沢市にできた。この九月から一部未完成のまま使いはじめた私立金城高校の建坪延べ四七〇坪、円筒の直径二五メートルという鉄筋コンクリート三階建校舎である。この校舎が現われたのはなにもこの建築がスマートだからというのではない。主なる理由は二つ。一つは幾何学の定理によると“面積の等しい図形のうち周囲の一番短いのは円である”というところから、この様式をとり入れると、建築敷地が一番少なくてすみ、従ってそれだけ運動場が広くとれること。いま一つは長方形校舎に比べて鉄筋が四分の一、コンクリートが二分の一で済む関係上、建築費が坪当り五、六万会陰(この三階建円筒一つ三〇〇〇万円)で長方形校舎の七、八万円に比べるとべらぼうに安くできるということである。しかし、長方形校舎だと北側が廊下になってるので教室にはまんべんなく陽が当るが、この校舎だと、各階はちょうど中央ホールを中心にしてその周囲に四つか五つの教室が集まった格好となるので、どうしても“陽の当らない教室”ができるばかりか、光線が生徒の後からくるので手許が暗くなるなど、考慮すべき点は少なくなく、まだまだテスト・ケースの域をでていないという。それでも安くできるというのにひかれるのか、今年五月以後だけでも千名以上の建築家や教育家が見学に現われ、東京では早くも二校が準備にとりかかったという。

直径二五メートルの円筒校舎の建坪の円周は約七九メートルだが これを長方形校舎にすると 長廊下や階段に全体の三割近くとられるので周囲約一〇〇メートルになるという(円筒校舎だと廊下や階段は全体の二割足らずですむ)

円筒校舎は屋上と3階しか完成してないので、今使っているのは3年生だけ しかし屋上は金沢市が一目に見えるので休憩時間には下級生までワンサと押寄せる この校舎は外壁の大半はガラス張りだが、力学的にみて長方形よりはるかに安定した構造なので台風や地震にも一層安全だそうだ

金城高校では上の模型のような円筒校舎2棟 長方形校舎1棟とさらに講堂1棟の建築を計画中で 総経費ザッと1億2000万円だという

各教室は扇形で その要に当る位置に黒板があり 生徒の机は黒板に対して弧を描くようにおかれている だから長方形校舎にくらべて生徒の姿勢が悪くなったり 気が散ったりすることも少ないという

円筒の真中には屋上から一階まで 直径五メートルの空洞があり ここにラセン階段がついているが、この空間はまた採光の役目も兼ねている

『アサヒグラフ』1954年11月10日号

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